2026年1月6日
ASCENT-6E特別講義開催
生成AI活用と創造的問題解決力育成のための探究型プログラミング演習
2025年11月23日、千葉大学の教育プログラム「ASCENT-6E」の一環として、株式会社トリプルアイズの片渕博哉CEOによる特別講義「生成AI活用と創造的問題解決力育成のための探究型プログラミング演習」が千葉大学西千葉キャンパスにおいて開催されました。
本講座は、外部講師による“現場からの知”を通して、学生の思考を深めることを目的に、千葉大学「ASCENT-6E」とトリプルアイズが共同で開催したものです。
当日は中学生と高校生の5名が参加し、プログラミング実習によって、現在の生成AIができることと限界を体験し、問題が発生したときこそ人間の「考える力」や「創造的問題解決能力」が必要であることを理解しました。
■AIによるコード生成とバグ入りコードのデバッグ演習
当日は次世代才能支援室長の野村純教授の開会の挨拶に続き、片渕博哉氏による講義とプログラミング演習が約100分にわたり行われました。
オリエンテーションの後、プログラミング演習1では、生成AIツールGeminiを立ち上げてCanvas機能で企業のホームページ作成を行いました。最低限のプロンプト入力からシングルページを作成した後に、企業のホームページにはどんな情報が必要なのかを生徒たちと話し合い、IR情報を追加したり、シングルページ構成からページ遷移の構成に変更したり、お問い合わせページに企業入力フォームを追加するなどして、より完成度の高いホームページが生成AIによってかんたんに作成できることを体験しました。
続く講義では、AIの“影”の部分にスポットを当て、「コード生成」や「資料作成」「リサーチ」など、人間ができることは“それなりの精度”でAIが代行できるが、ハルシネーションの問題が解決されていないことや高解像度の画像生成や保守性を担保したプログラム作成が難しいことなど、実際のビジネス現場で業務適用しようすると不完全な部分を挙げ、人とAIが共存して業務を行う「Human in the Loop」の考え方について学びました。
プログラミング演習2では、「バグ入りコードのデバッグ演習」と題し、個人ワークでアプリケーションのバグや問題点を発見する課題に挑戦し、グループワークではディスカッションした上でコード修正に取り組みました。最後にチームごとに発見したバグと修正したアプリケーションを発表しました。
生成AIは現時点においては、プログラムの保守や、セキュリティに強いコードを必ず生成できるわけではありません。「Human in the Loop」の考えにのっとり、AIのアウトプットを過信せずに、人間が結果の信頼性を見極めチェックすることの重要性について、体験を通して理解する講義となりました。





■ 教員の視点:人の役割・AIの役割を学ぶ
松元亮治特任教授は講義のまとめで、「プログラム演習では、短い時間にもかかわらず自ら問題発見と解決を行ったことに驚きました。講師からは、AIを活用していくうえで人間がコミットしていくことがいかに大事であるか話ししていただきましたが、AIを過信せずに、そのうえで学習や研究の有能なアシスタントとして大いに活用してもらいたいと思います」と生徒たちへメッセージを送りました。
森重比奈特任助教は今回の特別講義について、「中高生にとってAIは身近なもので、デバッグ演習も慣れた様子で取り組んでいたようです。AIが便利だからといって人間が考えなくなるのがいちばん怖い部分であり、実際にAIを開発するエンジニアの方から、人とAIの役割について解説していただくことで、生徒たちにも考える力の大切さが伝わったと思います」と評価しました。
講師の片渕氏は「グループワークでプログラムに潜む問題点をほぼ全部洗い出せていたこともすごいことですが、さらにセキュリティも含めてユーザーの立場に立った改善点まで修正できていたのは、驚きでした」と述べ、生徒たちのポテンシャルの高さに感銘を受けていました。
■ 生徒たちの声:AIの不完全さを知ったうえで、どのように活用していくのか
講義後の生徒たちへのインタビューでは、AIについて、自分の研究や生活に引きつけて活用していきたいという具体的な意見が上がりました。
「ウェブサイトを作ることに興味があったので参加しました。生成されたホームページを見て、AIの技術の高さに驚かされました」
「シンギュラリティやAIの高度化などが騒がれている現代だからこそ、正しい知識が必要だと思って、この講座を選択しました。やっぱりAIは不完全だなということがわかり、吟味していかないといけないのかなと思いました」
「今日受けてみて、AIも不完全だし、そのままコピーしたものを使っても自分の知識にならないことが改めてわかったので、それがいちばんの収穫でした」
「ゲームをつくるのにPythonをいじったことはあるのですが、演習をやってみて、トラブルシューティングが思ったより正確にできたのでびっくりしました。AIに対して印象が変わりました」
また、今後の展望として、
「私は生物学の研究を行っているんですけれども、研究の実験過程の中で、AIから新しい視点を得ることができるのではないかと期待しています」
「普段の生活でも、例えば夏休みの読書感想文の添削に使えるなと思いつつ、AIでも間違えることはあるので、最終確認は自分でできるように、AIとうまい具合に共存できるようにしていきたいなと思いました」
「スポーツ科学の研究をやっているんですけど、どういう体の使い方をすればいいのか、AIを活用して研究できたらいいなと考えています」
「僕は人の行動を予測するためのプログラムを作成しているのですが、基軸は自分で考えて、AIには改善点を指摘してくれるような助手的な役割を期待しています」
などの声が聞かれました。
■ 振り返りと今後の展望
今回の講義は、「プログラミング演習」を通して、生徒たちが「AIが作成したプログラムから間違いを発見し、改善点を考え、修正を加える」という一連の体験から、人とAIの協働や人だけが持つ解決能力について学ぶ時間となりました。
ASCENT-6Eでは今後も、トリプルアイズとの連携を通じて、社会とつながる探究教育を深化させていく予定です。
講師プロフィール
片渕博哉(かたぶち・ひろや)
株式会社トリプルアイズ代表取締役CEO
1991年生まれ。東京都出身。東北大学理学部中退。2016年にトリプルアイズにエンジニアとして入社し、開発業務に従事した後、AIに関する研究開発のリードエンジニア、囲碁AIソフトウェア開発マネージャー、AIエンジニア教育サービスの責任者、画像認識プラットフォーム・AIZEの開発責任者、DXS事業責任者等を歴任。23年より執行役員を務め、DXS/AI 事業責任者、当社グループのAIに関する研究開発責任者、事業計画の策定等を担当。またイベント登壇、企業セミナー、技術記事寄稿など外部発信も積極的に行う。25年11月26日より現職。